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止まらない――――
歯止めがきかなくなってしまっている。
キラは、笑う事もなくなり、毎晩の酷い責め苦に満足に身体の自由も利かなくなって、心も身体も壊しかけている。
そして、その状況を作り出したのは、他でもない。アスラン自身だった。
何とかしなければ、きっと取り返しのつかない事になってしまう。
それに気付いていながら、今日まで自分の暴走を止めることが出来なかった。
一番大切にしたい人を、一番傷つけて、苦しめている。
余りにも愚かだ。
本当は身代わりなんかではない、
キラこそが愛しい人なのに、それを伝える事が出来ずに、嘘で塗り固めた誓約でキラを縛り、身体だけを手にした。
無理やり犯して、自分に縛り付けた。
優しいキラは、それを受け入れて、尚もその約束を健気に果たそうとしている。
――――なんて非道なんだろう。
傷つけるばかりの恋情なのに、どうして開放してあげられないのか。
マリアの爪痕-後編-
「あの人が貴方を傷つけた分、オレが癒しますから……」
「お前の遊び相手だ。こいつをやるから、部屋で大人しくしていろよ」
「おいで…怖くないから」
「そうだ。ヴァニラがいい!ヴァニラにしましょうよ、こいつ」
「白くてほわほわで、おいしそうだから?」
「甘くて、おいしそうで…まるでキラみたいだ」
僕は死んでしまっているようなものなのに、シンはそれを見つけてくれた。
抱き留めてくれた。
僕を見つめた優しい紅い瞳を思い出す。
これは、裏切りだ。
アスランにもシンにも。
二人に対する…
「オレ、まだ諦めてませんから」
「言えないよな。シンとセックスしてきたなんて」
「アス、……」
「泣いても許さないと言っただろう」
彼の心は僕には触れられない。
アスランが僕をどう扱っても、それでも僕はアスランを愛している。
好きだから。
どんなに酷くされても、この身体はそれを受け入れる。
アスランが与えるのなら、痛みですら、喜びでしかない。
たとえアスランが僕を見ていなくても、
当て付けでしかなくても、
僕自身、どんなにアスランに触れられるのが辛かったとしても――――
「俺を蔑ろにするなよ」
「…何言ってるの」
「アスラン…んっ」
「キラ……」
「わかってるから…捨てるなんて、言わないで」
「あんまり構いすぎるなよ。殺したくなる」
「償いますよ」
「ヴァニラ…っ」
「……なら、お前が機嫌をとれ」
君が、見てくれるなら、必要としてくれるのなら
たとえ、誰かから罰を受けようとも――――
2月11日
マリアの爪痕-後編-
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